NTTドコモの加藤社長が、iPhoneの販売について話すとき、必ずと言っていいほど出てくるのが、Appleの課すiPhone販売のノルマについてです。
このノルマについて、正確なことは闇のままであり、実際にAppleと契約をしiPhoneを販売する携帯電話会社にしかその内実は知られていません。この契約は、Purchase Commitmentあるいは単にCommitment(コミットメント:誓約、約束、責務)などと呼ばれ、携帯電話会社はAppleと数年単位のコミットメントを結んでいます。携帯電話会社はそれに応じたiPhone購入義務を負います。
そのコミットメントについて、米国の携帯電話会社Verizon Wirelessが厳しい状態にあることをThe Wall Street Journal(via マイナビニュース)やBloomberg(via Mac Rumors)が伝えています。同時に、これまであまり知られていなかったコミットメントの実態がある程度明らかにもなっています。
Moffett Researchのアナリスト、Craig Moffett氏による、VerizonとAppleのコミットメントや他のキャリアについてまとめると次のようになります。
- Verizonは、Appleと3年間で450億ドルのiPhone販売契約を結んでいる
- Verizonは、2013年内に235億ドル分のiPhoneを販売しなくてはならない。
- 235億ドルというのは2012年の約2倍の金額であり、120億〜140億ドル分がまだ残っている
- Verizonと同様に、Leap WirelessもiPhone販売に対して厳しい状態にある
- Appleとの契約は、各キャリアによって異なる。早くからiPhoneの販売を始めたキャリアほどそのノルマは高くないと考えられる
- AT&Tは、米国内で最も早くからiPhoneを販売しており、その2013年のノルマは38億ドルといわれている
- Sprintは、4年間で155億ドルのノルマといわれている
- 米国外の他の携帯電話会社も、Verizonと同様に、iPhone販売未達成を経験している可能性がある
- 過去、Appleとの契約を達成できなかったケースは報告されていない
- Appleは、未達成のキャリアにどのような処置をするかは不明
- Appleは、未達成キャリアに対してその分の端末購入を要求し、契約停止および新端末の供給停止を行うかもしれない
- Appleは、未達成キャリアに対して寛大な処置を取る可能性もあるが、そのような単純な処置は不要な先例を生む可能性もある
- いまだiPhoneの販売を行っていないキャリアの多くは、Appleとの販売契約を恐れている
- そうしたキャリアには、世界最大の中国移動のほか、日本、ロシア、インドなど、合計で数十億の顧客を抱えるキャリアが含まれる
日本では、ソフトバンクが2008年より最初にiPhoneを販売しました。その後、auが2011年より加わりました。上記に照らし合わせれば、auのコミットメントはソフトバンクよりも厳しい可能性があります。現在、iPhone5はMNPによる新規契約で大幅な割引が実施されています。たとえば、7月現在、両社のiPhone5 16GBはMNPで一括0円が当たり前になってます。こうした動きは、ソフトバンクよりもauの方が早く、そこにはAppleとのコミットメントが働いているかもしれません。
興味深いのは、こうしたiPhoneの安売り攻勢によってドコモから他社への流出が大きくなり、ドコモが主力製品のMNP対策を復活させたことです。
ドコモは、Appleのコミットメントを懸念してiPhoneの販売に踏み切れないないようですが、ドコモがiPhoneを扱うとも扱わずとも、iPhoneとそのコミットメントにより少なくない影響を受ける結果となっています。
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